前回に引き続き、Open Education Conference2011についてです。
学会の開かれたユタ州パークシティのホテル。スキー場のあるリゾート地で、この時期は閑散としていました。
学会ではオープンな教材(OER:Open Educational Resources)に関する数多くの発表が行われました。特徴的だったのは、オープンな教材を、米国内の教育問題解決に生かす取り組みが多く見られたことでした。これまでオープンな教材の開発や共有は、先進国の発展途上国へ向けた「国際教育協力」とも呼べる取り組みが中心的でした。しかしここ数年は世界的な経済状況の悪化も影響して、米国内で大学の学費値上げや学生の教育ローン返済苦など、高等教育システムのほころびが見受けられます。これについては以前にも取り上げました。
The Shigeta Way: 【転載】アメリカ大学事情(2):大学財政の悪化とキャンパスにおける抗議活動
http://shige.jamsquare.org/2010/12/2.html
近年、特にカレッジを中心としてオープンな電子教科書(Open eTextbook)の利用が広がっています。カレッジは学費が比較的安く地元から通う学生も多く、教科書が教育費に占める割合が高いため、教科書を無料にすることで教育コスト削減が期待できます。今回の学会では、ユタ州やカリフォルニア州など複数の事例が発表されましたが、印刷して利用することを前提とした教科書がほとんどであったことが印象的でした。教科書の内容はウェブ上のオープンな教材を組み合わせて開発し、印刷可能なフォーマットで配布されます。電子教科書を利用しているカレッジの調査でも、学生は印刷した教科書の方をより好むという結果が出ているようです。