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学費値上げに対抗する学生デモ
私が米国にいた2009年、赴任地のUCバークレーでは公立大学の財政事大学財政、激しい抗議活動情の悪化による様々な動きがありました。2008年に起きたリーマンショック以降州からの補助金が削られ、米国の公立大学は財政的な窮地に立たされていました。米国の中でも景気悪化が深刻であるカリフォルニア州ではその影響も深刻で、私が滞在していた昨年はキャンパス内でも数々の混乱がありました。
私がバークレー校に赴任したのは8月末でしたが、帰国した翌年3月頭までの間に計3回のデモ活動がありました。そのうち2回は2009年9月と11月に起こったもので、学費の値上げ(州内からの学生で25%増)に反対する学生によるデモでした。その中でも11月のデモは大規模で、学生がキャンパス内の通りを塞ぎ、学生や教員に講義を欠席・中止するよう呼びかけました。学生デモ隊は講義棟の一つを占拠し、学内の警察隊に加え地元の警察も出動する騒ぎとなりました。結局、その日は休校日となり、私もデモ運動を横目に見ながら帰宅しました。
デモの変化:学生と教員がともに州へ抗議
ところが翌年3月に起こったデモ活動は、少し様子が違いました。デモの矛先が大学から州政府へと変わったのです。大学の財政が逼迫しているのは大学だけのせいだけではない。補助金をカットし教育に充分な予算を割かない州政府にも原因があるのだー このような論理のもと、キャンパスに「Public Educationを守らねばならない」という共通認識がキャンパスで生まれ、大学に関わる人々が一丸となって大学の窮状を州政府に訴えました。この時のデモ活動では、教員と職員、学生が共に州都のサクラメントや近隣の州事務所にパレードし、教育予算カットを止めるようデモ活動を繰り広げました。なお、このような活動がUC Berkeleyだけにとどまらず、全州の大学で同時多発的にデモ活動が行われました。
学内でデモ活動が起こるたびに、UC Berkeleyの学長からキャンパス全員のメールアドレスへ向けて、冷静に大学の窮状を説明し、感情的な行動を避けて困難を乗り切ろうと訴える一斉メールが送られていました。また教職員は無給休暇(Furlough)を自主的に取って経費削減を目指す運動を行っていました。この取組みは一年間続き、これにより人件費の4-10%を削減することができたそうです。
アダルトスクールでも経験した財政事情の厳しさ
なお余談として、私が英語を学ぶために通っていたアダルトスクール(Adult School)でも、財政問題は深刻でした。私はBerkeley Adult Schoolという公立のアダルトスクールに通っていました。アダルトスクールは、若い人に限らない幅広い世代に向けて、語学教育や専門スキルの教育などを行なっており、特に移民や留学生に向けたESL(English as a Second Language:英語を母国語としない人達のための英語教育)には数多くの受講者がいます。私が留学した2008年度まではESLのクラスは無料でしたが、2009年より一人数十ドルの受講料を払うようになりました。また教員の数やクラス数も減らされ、一ヶ月遅れで渡米した私の妻は、人数超過のため受講できず、他のアダルトスクールを探さねばなりませんでした。
【参考URL】
Year-Long UC Furlough Program Ends - The Daily Californian http://www.dailycal.org/article/110176/year-long_uc_furlough_program_ends