2010/12/11

【記事解説】カリフォルニア州で進む、電子教科書を使った教育

ネット上で興味深い記事を見つけました。カリフォルニア州で進められている電子教科書利用についての解説記事です。その中身をかいつまんで紹介します。

California Embraces Open Source Digital Textbooks -The most populous state is the first to take on this complicated initiative-
http://www.edutopia.org/california-open-source-digital-textbooks

全米初のプロジェクト:オープンソース電子教科書

California Learning Resource Network(CLRN)は、全米初のオープンソースを活用した「電子教科書イニシアティブ」で、2009年5月に立ち上げられました。このイニシアティブの目的は、電子教科書の開発ではなく、その「評価」です。さまざまな個人・団体から寄せられた電子教科書がどの程度州の基準に見合っているか「評点」をつけて、イニシアティブのウェブサイトに、評定結果と教科書へのリンクを載せています。第一回目の評定では、16の評価結果が掲載されました。
(先ほどCLRNのサイトを確認したところ、すでに第二回の評価結果も掲載され総数は33となっています。現在、第三回目の募集が行われているようです。)

California Learning Resource Network
http://www.clrn.org/home/

評定された電子教科書の中には、紙の教科書をスキャンしただけのものもあれば、補助教材へのリンクが埋め込まれているようなデジタルの特性を生かしたものもあります。州の教育担当大臣が「これはハードウェアではなく、コンテンツである」と話しているように、カリフォルニア州では電子教科書のソフトウェアに焦点をあて、デジタル教科書に「お墨付き」を与えて教育現場での利用を促しているようです。

オープンソースでコストを削減、オリジナルの教科書も作れる


カリフォルニア州が電子教科書をを推進している大きな理由の一つが、教育コストの削減です。電子教科書をオープンソースとすることで費用負担をなくし、教科書にかかる費用を低減することを狙っています。一方、電子教科書が生徒一人一人に使われるには、生徒それぞれにPCなど電子端末が必要です。米国ではメーン州など、州のほぼ半分の高校生にノートパソコンを配った地域もありますが、カリフォルニア州では財政難もあり、まだ途上のようです。

 米国では「CK-12 Foundation」や「Curriki」など、オープンソースの素材をWeb上で自由に組み合わせて再編集(remix)し、オリジナルの教科書を作れるサービスもあります。ここでは、ユーザーごとにアカウントを持つことができ、サイト上の素材を組み合わせて教科書を作ったり、iTunesの「プレイリスト」のように自分のコレクションを作って他のユーザーに紹介したり、テンプレートを使って作った教材を互いに評価し合うこともできます。

教育現場での利用も進む、携帯に対応も


素材がオープンソースであることを生かして、独自の教科書を作い授業で利用する実践も進んでいます。教師の教えたい内容や教え方に即した教科書を作ったり、デジタル化されている強みを生かして検索機能やビデオ、クイズを埋め込んだ教科書が作られています。将来的にはPCが手に入らない生徒のために、携帯電話からも見ることができる教科書も視野に入れています。カリフォルニア州では現在、数学と科学の教科書のみ評定されていますが、将来これを他の教科にも拡げる予定です。インディアナ州・フロリダ州・バージニア州など他の地域でも、同じような取り組みが広まりつつあります。

この「電子教科書イニシアティブ」が本当にうまくいくのかについては批判もあるようです。しかしカリフォルニア州としては、電子教科書を州の教育システム改善への重要なステップと位置づけ、強力に推進しています。記事に掲載されている電子教科書を使い始めている教師からも、「もう重くて高い紙の教科書にはもどらない」とのコメントが寄せられています。

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以上、記事紹介でした。多少かいつまんでいますので、興味を持たれた方はぜひ原文に目を通して見て下さい。
こういう記事に出会うと、「さすがシリコンバレーもあるだけに、先進的だなぁ」と思いがちですが、かの地の教育を取り巻く状況は、非常に複雑で深刻です。しかしこのような差し迫った状況だからこそ、多くの人々の知恵が絞られ、新しい取り組みが生まれているのかもしれません。引き続き進捗を見続けたいと思います。