最近、私の中では新書ブームです。
amazonでまとめて仕入れ、箱のビニールをひっぺがし、帯をカバーを外して(この方が読みやすいから…読み込んだ本は大抵カバーが消えます)メモや折り目を加えつつ、ひたすらページをめくります。
「ルポ貧困大国アメリカ」を読みました。
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二、三年程前、研究で遠隔教育に関わっていた頃、米国の中学校に何度か出かけ、教師や学生と一緒に遠隔授業をしていました。
現地で衝撃を受けたのは、彼らの給食です。日本の給食といえば、栄養バランスの取れたメニューが(好みに関わらず…)出てくるイメージですが、彼の地は違います。ビュッフェ形式で配られるのは、こんな感じの食事でした。
濃い味付けの挽き肉、ポテト。この山盛りをガッツき清涼飲料で流し込む子ども達。ま、おいしいけどね、確かに。でもこれを毎日とは。。
先生に理由を尋ねると、「安いし調理がいらないから、子どもも好きだしね。実は軍や州の備蓄からの払い下げなのよ」とのこと。
これは、比較的裕福な地域での出来事です。
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本書では直視し難い、米国・中下流の生活が描かれています。
家庭環境のため満足な食事が取れず、学校給食や食料配給に頼らざるを得ない子ども。
大学の奨学金を得るため、軍のファンドに申し込み、卒業後戦場に送られる学生。
帰還兵のケアセンターのスタッフの言葉。
「…詳細に希望が持てる若者を育ててゆくことで、国は始めて豊かになっていくのです。
学びたいという純粋な欲求が、戦争に行くことと引きかえにされるのは、間違いないのです…」
誰かが仕掛けたでもなく、社会的背景や市場の原理が引き起こす、若者たちに降り掛かる現実。
将来、世界のどこで起こっても不思議ではない、未来。
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グラミー賞にも輝いたトレイシー・チャップマンの「Fast Car」
未来を断たれた恵まれない若者の、逃げ場のない現実が歌われています。
--- I'd always hoped for better
Thought maybe together you and me would find it
I got no plans I ain't going nowhere
So take your fast car and keep on driving ---
しかし、"Fast Car"がもたらすものは、現実からの逃避か、生きること自体からの逸脱だけ。
生きる苦しみを解き放ってくれるものなど、どこにもありません。
悩みながらも、今が少しでも「良くなる」よう動く。それが生きる術かと思います。