この週末、以前から気になっていた「アメリカ海兵隊」を読みました。
これは「知識創造企業」などで著名な野中郁次郎氏が、かつて共著で執筆された「失敗の本質」に続き、米海兵隊の調査分析を行った著書です。
「失敗の本質」は私のバイブル?と呼べる一冊です。日本人が世界で生き抜くための数々の教訓が、かつての敗戦という「失敗」をベースに記されています。
「勝ちに不思議の勝ちあれど、負けに不思議の負けはなし」で、「過去に盲目なものは、現在にも盲目である」と。 そう。仰る通りです。日々反省。。。
「アメリカ海兵隊」には、米海兵隊が設立以来「常に存在理由を問われてきた」、すなわち陸・海軍への吸収合併・廃止の危機を乗り越えてきた歴史があります。
米海兵隊は当初同様の組織を持つ英国に対抗して設立されたものの、それは海軍船に同乗する保安要員でしかありませんでした。その後海軍への吸収を求められるに従い、当時米軍が取り組み始めた太平洋への展開に乗じ、島嶼部への前線戦略部隊と位置づけを変え、太平洋戦争で旧日本軍を悩ませた「水陸両用部隊」を世界で初めて考案し大成功をおさめ、米軍内での地位を確固たるものとしました。
その後も多くの戦争・紛争の参加を通して、数々の組織変革・用途に即した兵器の開発(V/STOL機ホーカー・シドレー ハリアーの導入など多数)を続けています。
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本著では末尾に、米海兵隊を「自己変革組織」と位置づけ、その要件を示しています。
ここで面白かったのは、よく組織改革というと「まず社員の意識変革から!」とか言ってセミナーを催したりしますが、本書ではむしろ組織の存在理由・価値の具現化が重要だと述べられています。
米海兵隊では自らの組織の存在理由を問いかけ・定義した後、それを具現化する組織体制、兵器兵法の開発を行い、「目に見えるもの」を作り実践することで、組織の人員の精神に還流することを狙っています。分析の視点自体が「暗黙知ー形式知のサイクル」にそもそも寄っている感はありますが、示唆に富んだ指摘です。
また、米海兵隊では入隊後11週間、徹底的な訓練を通じて肉体・精神的な「変革」を行います。そう、かの有名な"boot camp"です。組織変革には、構成員皆が共有できる「普遍的な価値」の学習が大前提とも指摘されています。
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…組織変革をセミナーやWSなどで促そうとの試みもあるようですが、成功している組織はこうした積み重ねが功を奏しているように思います。
変革を短期的に促す研究もいいですが、成功事例の要因研究も面白いのではないでしょうか。
��誰向けか大体分かるな…)