2009/12/30

12月の近況

早いもので2009年も残りわずかとなりました。12月は2回出張があり、その合間にUCBでの研究活動を進めました。

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12月最初の週末はロサンゼルス近郊、Orange CountyにあるUC Irvineに、UCI OCWのディレクタを務める傍らでOER(Open Educational Resources)の再利用の研究をしているLarry Cooperman氏を訪ねました。実は以前学会でお会いしたことがありましたが、今回は長時間にわたりお話を伺いました。彼のプロジェクトでは以前、複数のOCW教材から、必要な部分を抜き出して組み合わせる再利用のやり方をしていたが、その方法には版権処理や教材の文脈が失われてしまうなど問題も多く、最近は色々と試行錯誤しているようです。

OERの再利用研究には、Connexionのような再利用が行いやすいプラットフォームを構築する方法、ミシガン大学のdScribeのような学生が教員をサポートする方法、あとは少し方向性は違いますが教材をまるごと翻訳して開発途上国など教育リソースの不足している地域で使う方法、少なくともこの三種類の流れがあるらしいという大枠までは掴めてきました。残りの滞在中にさらに情報収集を進める予定です。

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その次の週末は、UWの大浦さんと一緒にMITの飯吉先生を訪ねました。MITでのディスカッションも滞在中の大浦さんとの情報交換もとても有意義でした。一泊三日の強行スケジュールでしたが、東海岸まで出かけた甲斐がありました。


UCBでは、私が客員研究員として席を頂いているETS(Educational Technology Service)の組織そのものの研究をしています。このETSはなかなか面白い組織で、学内の教員・学生のICTを使った教育支援を、CMS利用のコンサルティングに電子教材の製作、講義のインターネット配信、果ては教育イベントのサポートや機材の貸し出しまで、テクノロジーに関わる教育支援を組織的に包括的に行っています。

このような組織がいわゆる学内情報センターや教育学部と独立して存在しているのは、米国でも珍しい組織形態です。ETSは10年前にいくつかの組織が統合され今の形になりましたが、それまでには数十年にわたる学内外における様々な経緯や社会的背景がありました。今後日本での組織的なテクノロジーを使った教育支援を考えるにあたっても、このような事例は今後の方向性を考える上で参考になるかもしれません。ただ形をまねるのではなく、その背景にある歴史や背景を知った上で日本にあてはめる、そのような取り組みに少しでも役立つような研究ができればと考えています。OER再利用の研究は帰国後も続けますが、ETSの組織研究は滞在中に何らかの形にまとめて持ち帰る予定です。

米国滞在も残り2ヶ月強となりました。成果を上げて帰れるよう、悔いのないように頑張ります。