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このサイトは重田勝介の個人サイトです。主に日々の活動について紹介しています。重田は教育工学とオープンエデュケーションの研究者で、北海道大学に勤務しています。詳しいプロフィールこちら
Katsusuke Shigeta Ph.D (Human Sciences at Osaka University) , a researcher conducting educational technology & open education research at Hokkaido University, Japan.

2013/02/22

How to support MOOCs: 大規模公開オンライン講座の学習支援



MOOCs(ムークス:Massive Open Online Courses:大規模公開オンライン講座)を開設する大学が、急速に増えています。OCW(Opencourseware、オープンコースウェア)のような、教材を公開することにとどまらず、MOOCsでは数週間で学べる学習コースを開設して参加者を募り、一つのコースに数万人単位が参加しコミュニティを形成し教育を行うことができます。ここ一年だけで、数多くの教育ベンチャー企業や大学コンソーシアムがMOOCsを開講してきました。



・Udacity
物理学や統計学、検索エンジンの作り方などの講義を公開する教育ベンチャー企業。スタンフォード大教授のスラン教授らが2012年に開設。
http://udacity.com/

・Coursera
世界のトップレベルの大学講義を公開する教育ベンチャー企業。スタンフォード大学のコラー教授・ネグ教授らが開設。米国やヨーロッパ、アジアから数十の大学が参加。
http://coursera.org/

・edX
ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学が共同して開設したMOOCsを開講するコンソーシアム。現在は米国やカナダから十数校が参加。
http://edx.org/

・FutureLearn
英国オープンユニバーシティが支援する形で、英国の複数大学が共同で開設したMOOCsを開講する組織。
http://futurelearn.com/

過去にも大学は一部の例外を除いて、自校の学生だけに向けてオンライン教育(eラーニング)を進めてきました。その意味で、MOOCsは大学が開講する一般向けのeラーニングと言えます。しかし、eラーニングという要素は共通なものの、MOOCsにはこれまで大学が取り組んできたeラーニングとは異なる多くの課題があり、定着や拡大には困難が伴います。既に、いくつかのMOOCsでオンラインコースの運営をめぐる「つまづき」が起こっています。

・オンライン学習についての講義
コースの設計や教員の指示が不十分で、受講者が何に取り組むべきなのか分かりにくく、用意された掲示板上でクレーム殺到した。結果的に、講師はこの講義を閉講。
Coursera forced to call off a MOOC amid complaints about the course | Inside Higher Ed
http://www.insidehighered.com/news/2013/02/04/coursera-forced-call-mooc-amid-complaints-about-course

・ミクロ経済学の講義
教員が大学レベルの講義を行おうとし、学術書を指定図書に指定したが、受講者にとって図書を読むことや買うことが難しかった。参加者からクレームもあり、結果的に教員は講義の中止を宣言した。その後別の講師が代役となり、講義は継続されている。
UC Irvine professor quits midway through online Coursera class - latimes.com
http://latimesblogs.latimes.com/lanow/2013/02/uc-irvine-business-professor-stops-teaching-midway-in-online-coursera-class.html

なぜこのような問題が起こるのでしょうか。要因としていくつか考えられます。

1)学習者の数が非常に多い(数万人規模)
 教員やチュータが受講者へきめ細かなメンタリングを行うことが難しい。受講者のリテンションが確保できない
2)教授者が(多くの場合)eラーニングに慣れていない
 教授者が対面講義と同じ要領を導入しようする。そもそも、eラーニングに慣れている教員はまれである
3)学習成果の確保
 コースの完遂率は現状5%程度と言われている。最初の試験で受講者は半分になるなど、ドロップアウト率が非常に高い。そもそも、受講者の既有している知識のばらつきが大きい

これらの課題に取り組むために、大規模オンライン講義を運営し学習成果を確保するために何をなすべきか、MOOCsの学習支援のあり方について深く考える時期が来ているように考えられます。講師がeラーニングでの教授行為に慣熟するための研修、参加者の学習状況を把握するためのシステム開発、自動採点や学習者の相互評価(ピア・レビュー)手法の検討、これらのアプローチを取り入れた評価研究など、さまざまな開発・実践研究が求められます。

実はこれらの課題は、これまでのeラーニングにおいても取り組まれた課題と似通っています。これまで教育工学・教授システム学・情報学で培われてきた数々の知見を上手に取り入れることで、いくつかの課題は解決の糸口が見つかりそうです。これまでの学習研究による蓄積は、MOOCsの学習支援にとって有効なヒントになるでしょうし、研究のフィールドという切り口で捉えても、MOOCsはなかなか興味深い学びの場と言えそうです。