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このサイトは重田勝介の個人サイトです。主に日々の活動について紹介しています。重田は教育工学とオープンエデュケーションの研究者で、北海道大学に勤務しています。詳しいプロフィールこちら
Katsusuke Shigeta Ph.D (Human Sciences at Osaka University) , a researcher conducting educational technology & open education research at Hokkaido University, Japan.

2012/12/07

教育コンテンツとライセンスの微妙な関係(1)


先日Open Knowledge Forumに興味深い記事が掲載されました。

オンライン教育に適したライセンス | Open Knowledge Foundation 日本グループ
http://okfn.jp/2012/11/27/ncnd/

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MITの”OpenCourseWare“をはじめ、有名大学が次々とオンライン教育コースを開始しています。さらに、Khan Academy、Codecademy、Coursera のようなMassive Online Open Course(MOOC, 大規模オンラインオープンコース)も急速に普及しており、Corseraについては正規の学歴として認定される条件を詰めるところまできています。
こうしたオンライン教育の教材には、Creative Commonsのライセンスが適用されていることが多いのですが、その多くは「改変禁止」(ND)、あるいは「非営利」(NC)のライセンスが採用されています。教育という目的からすると、こうした選択は一見合理的で妥当なように見えます。しかし、教材に対してこうした制限を課すことによる弊害もあります。
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どういうことでしょうか。少し解説をしてみたいと思います。



OCWやOERなどのオープン教材はインターネット上に無償で公開される教材です。オープン教材は教育または学習目的にそのままの形で使うこともできますが、さらに目的に応じて「作り変える」ことも可能です。例えば、iPS細胞を解説した教材に山中教授のノーベル賞受賞について追記したり、高校生向けの教材を小学生に使わせるために解説を平易にし漢字を減らすなど、内容の更新や目的に沿った修正などがあります。作り変えた教材をパッケージにして販売し、お金儲けをすることもできるでしょう。このように元の教材を改変して使うことは「二次利用」と呼ばれます。

この「二次利用」は、元の教材の作者に断りなくしてもよいことでしょうか?
そうではありません。作者によっては、「教材の意図が変わってしまうので、手を加えないでほしい」「教育目的に無料で配布するならよいが、営利目的に使ってないけない」など、条件を付けることもあるでしょう。
もし、作者が自分の制作物(著作物)の二次利用を許す範囲をあらかじめ制作物に記載しておけば、二次利用をする人は作者への問い合わせの手間が減り、より手軽に二次利用ができるようになると考えられます。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは、このような「著作者が自分の作品にあらかじめ表示した、許される二次利用の範囲」のことです。(ざっくり言えば)

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスでは、二次利用の範囲について定めた表示のフォーマットを条件ごとに定めています。下の図をごらん下さい。


左右の一番左側が「All Rights Reserved」、つまり二次利用の全ての権利は著作者が持つ状態。一番右側が「PD(Public Domain)」、全ての権利を放棄している状態です。
最近、「ブラックジャックによろしく」の作者が二次利用をフリーとして話題となりましたが、この状態がまさにPDです。

「ブラックジャックによろしく」が2次利用フリーに 商用・非商用問わず自由に利用可能 - ITmedia ニュース
  http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1208/20/news098.html

「All Rights Reserved」と「Public Domain」どちらでもない中間として、二次利用が許される範囲が記載されます。例えば「表示(BY)」は作品のクレジット(作者)を表示すること、「非営利(NC)」は営利目的での利用をしないこと、「改変禁止(ND)」は元の作品を改変しないこと、「継承(SA)」は、元の作品と同じ組み合わせのCCライセンスで公開することです。これらを組み合わせてライセンスの範囲を表示しますが、このような両者の中間にあるライセンス形態は「Some Rights Reserved」とも呼ばれます。

条件の中で、「継承(SA)」について少し補足をします。継承とは、元のコンテンツに表示されているライセンスを、改変したコンテンツにそのまま「引き継ぐ」ことが義務付けられた状態です。例えば、下図のAというコンテンツが「CC-BY-SA(表示・継承)」の場合、そのAを使って作ったコンテンツBも同じライセンス、すなわち「CC-BY-SA(表示・継承)」を保たなくてはならない、という意味です。

このように同じライセンス形態を子孫の代まで引き継がせることで、ある段階で再利用を終わらせないようにし、新しいコンテンツの制作を促そうという意図があります。このような考え方は「コピーレフト(Copyleft)」とも呼ばれ、Linuxなどに採用されているGPLの考え方に近いライセンスです。

Linux用語事典 [GPL(General Public License)]
http://www.atmarkit.co.jp/aig/03linux/gpl.html

ではなぜ、オープン教材に「非営利(NC)」や「改変禁止(ND)」を付けるのはよろしくない、という話になるのでしょうか。
長くなりましたので、稿を改めたいと思います。(次回に続く)