2011/10/07

夏のリフレクション その1:教育工学会ワークショップ

早いもので10月です。今年は夏と秋が急に入れ替わった気がします。
9月はセミナーや研究会、学会と「出ずっぱり」な一月でした。学期が始まり全てが忘却の彼方に去ってしまう前に、少しばかり振り返りたいと思います。

まずは、教育工学会で開催したワークショップについて。
開催前にもブログで告知致しましたが、若手教員のキャリア形成を考えることを目的に、ワークショップを開きました。

The Shigeta Way: 日本教育工学会ワークショップ:「『大学教育センター』に所属する若手教員の悩みと将来展望:業務・研究・キャリア」を開催します
http://shige.jamsquare.org/2011/09/blog-post.html

多少告知を頑張ったつもりだったのですが、蓋を開けてみればなかなか人が集まらず…。同時に開催された他のワークショップも充実しており、やむを得なかったかもしれません。
お越し頂き、議論にご参加頂いた方々に、心より感謝を申し上げます。ありがとうございました。

ワークショップの様子。
共同開催者の林さんより、写真を頂きました。ありがとう!

ワークショップでは私からのイントロダクションに続いて、若手教員であり共同開催者でもある渡辺さん@首都大・松河さん@大阪大・林さん@東大のお三方から、ケーススタディとしてそれぞれのキャリアについてお話頂きました。

今回は議論の叩き台として、便宜的に大教センターの若手教員を3タイプに分類しました。仮にここでは、大教センターでの業務を教育企画やFDとしています。

  • 「一般的な」研究者
    • 研究領域のあてはまる学部学科に所属する研究者です。自らの研究領域の中で研究教育を行います。
  • タイプ1:業務と研究を切り分ける
    • 教育研究に携わっているが、業務と関連を持たせていない研究者です。業務は仕事と割りきって関わります。研究が業務の方向性に左右されない反面、研究+業務と二重に負荷がかかります。研究領域が教育学系でないという点が、一般的な研究者との大きな違いです。
  • タイプ2:業務の中で研究する
    • FDなど業務に関わりのあるフィールドで研究活動をする教育学の研究者です。業務と研究のシナジーが期待される反面、業務が研究の幅に制限を与えることもあり得ます。
  • タイプ3:異なるディシプリンを持っている
    • 教育学系の研究者ではないが、大教センターに所属する、教育学以外の領域に携わる研究者です。業務は仕事と割りきって関わる点は「タイプ1」と同じですが、研究領域が教育学でないため、将来は大教センター以外の職場で働くことを目指しています。
あくまで「叩き台」としての分類であり多少の不自然さはありますが、これを出発点に大教センターに所属する若手教員のキャリア形成について議論を行いました。
ワークショップで使ったスライドはこちらよりダウンロードできます。

議論は多岐に渡りましたが、私個人として印象に残った点をいくつか挙げておきます。

  • 自分の「コア・バリュー」をどこに置くか?
    将来の転職を考えた場合、研究領域だけでなく、業務内容や業務経験が問われることも多い。自らの研究の強みだけでなく、より多様な見方で自分の「強み」「弱み」に意識的になることが、将来設計において大事である。
  • 大教センター教員の「関係性の作り方」
    ゼミを持てず、学内外での教育活動が制限される若手教員の場合、研究やキャリアについて語り合ったり、共同研究の相手になる「仲間」を見つけることが容易でない。若手教員同士のフラットな関係性の中で、自分の「強み」を見つけて相互貢献し合えるような関係性を築くことが必要といえる。
  • 「タイプ2」教員は一見理想的だが、壁も高い
    業務をしながら研究もできる「タイプ2」の教員は一見理想的にも見えるが、何らかのスキル(システム開発・調査スキル等々)を持っていることが研究遂行の条件となるため、業務フィールドを研究対象にもできるような能力をどのように養い伸ばすかが課題である。


最後に、千葉大学・藤川先生の以下エントリーが、学会参加への心構えとして大変参考になりますので、リンクを貼らせて頂きます。同じ学会に重ねて参加していると場慣れが過ぎ、貴重な出会いやインプットの機会を逃しかねません。毎回新鮮な気持ちで、好奇心を失わないように参加したいと思い直しました。

日本教育工学会全国大会、よい形で参加するために: 藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ
http://dfujikawa.cocolog-nifty.com/jugyo/2011/09/post-bab7.html