2009/09/23

At Cal Day37: 第一部の最後の日、残り5ヶ月

朝から肌寒い。ここの所、一週間位のサイクルで、最高気温が30度を超える時と、25度を下回る時が繰り返されている。前者の場合、昼間のオフィスが暑いせいか、使っているMacBook Airの動作が遅くなって仕事が進まなくなる。(オフィスにも、ちなみに家にも冷房はない)そのため、先週Snow Leopardにアップデートしたのと同時に、CoolBook ControllerというCPUの電圧制御をするシェアウェアを入れることに。これでほぼ解決、気温の高いオフィスでも、家のベッドの上でも、熱を持つことがなくなった。

お昼休みに、居候しているbSpaceの部屋の人々と昼食会。キャンパス近くのレストランでチーズバーガを頂く。日本の大学のことや観光、治安のなどを日本と比較して話す。ディスカッションというほどでもないが、情報交換よりは掘り下げた程度。昨日のうちに、こんな話をするかな、と想定をしていた話題もあったので、会話にはさほど苦労せずに終了。日本でもそうですが、(意外と?)お話をすることは得意ではないので、前もって話を考えておかないと躓く。

午後からは文献と資料の整理。今週から部署のグループウェアとファイルサーバにアクセスできるようになったので、大学のアドミニストレーションに出している報告書や提案書を読み進める。組織の活動経緯が分かって、調査の下準備にとても役立つ。

明日の帰国準備があるので早めに帰ろうかと思っていた矢先、ビルの火災報知器が鳴り響いた。外に出るように促され、鞄とPCを抱えて外へ飛び出す。幸いなことに、どうやら家事ではなかったらしい。この時期UCBはテストシーズンで、切羽詰まった?学生さんが火災ベルを鳴らして、試験をさせないように実力行使(本当の意味ではない)をして、テストを止めてしまうことが度々あるらしく、今回もそうだろうと話していた。本当かいなと驚く。

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ビルの外は、避難してきた学生・職員で大混乱。

1時間は中に入れないだろうという話だったので、オフィスの人にさよならを告げ、帰宅。
明日から帰国、米国に戻るのは10月9日の予定。これで米国滞在は残り5ヶ月、ここまでで日程を15%消化した計算。

2009/09/22

At Cal Day35,36: シアトルにて、始めるという才能

今日から二日間、シアトルへ元同僚の大浦さんに会いにいく。

朝4時に起きてSFOへ移動、BARTに乗って1時間強で到着。前に住んでいた目黒から羽田への感覚とほぼ一緒。最初、乗り換えが分かりにくいのが難点。サンフランシスコ湾をわたる前に、北か南、乗ってきた方向に応じて決まった駅で乗り換えないといけない(らしい)。今回は南向きなのでMacArtherで乗り換え。

SFOからは、UA64便で移動。UCBの職場で、私がいつもUAを使っていると言うと「信じられない、あんなサービスの悪い会社なのに!」と驚かれた。どうやら米国でも日本と同じ評価のようだが、同じ会社を使い続けていると、それはそれでメリットもある。そもそも多くを求めていないということかもしれないが。

シアトルからレンタカーで移動し、大浦さんの家へ向かう。車はトヨタ・カムリ、なぜだかこちらの日本車は、日本で見るより断然カッコいい。しかしこのサイズで変速機がCVTなのには驚いた。こんな中型車(一昔前なら、大型車)の出力にも耐えるようになったんだ…隔世の感。家に着くと大浦さんが飼い猫と一緒に出迎えてくれた。なかなか立派な所に住んでいる。自然に囲まれていて、静か。友人の親の別荘をルームシェアしているとのこと。

家でひとしきり近況を話した後、ワシントン市内へ案内してもらう。Public ParkやDowntownを巡る。夜は市内のシーフードレストランで、蟹を食べる。とても美味しかった。

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市内のタワーから見下ろした、ワシントン市内。高い所は苦手です。

翌日はワシントン大学を訪ねる。UCBより洗練されている印象。図書館も負けず劣らず、充実していた。大学の近くでお昼を食べて、またレンタカーを運転し、夕方のUAでSFOへ、そして帰宅。

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ワシントン大学図書館の読書室。「Behaviorismのはじまり」というJ.Watsonを紹介した旧い本があって、思わず読んでしまった。

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何ごとも、始められることが才能である、と言われることがある。大浦さんはまさに、この才能に恵まれた典型である。もちろん他の才能にも数々恵まれているが、どうして彼はそこまで思い切れるのだろう、と羨む人は多いだろう。「大浦さんは勘で生きているから」とゴマかす人もいるが、私が思うに、彼はむしろ戦略の人である。(戦術の人ではない、この違いは大きい。戦術の人はゴマンといるし、それを戦略だと勘違いしている人も多い)

私はそれを羨んで、自分でも挑戦をした。その結果、いま私は米国に住んでいる。自分の周りに住んでいる人というのは、少なくとも私にとってとても大切なものである。

2009/09/20

At Cal Day33,34: 休日、帰国準備、ブラック・スワンが楽しい

ようやくの休日。来週は月・火とシアトルに、ワシントン大学で大学院に通っている元同僚の大浦さんを訪ね、木曜日から一時帰国をする予定。いつもの家事や洗濯に合わせて、部屋を整理する。嫁さんが来たときに散らかっていたら、がっかりだと思うので、頑張る。
一つ困ったことがあって、多分木曜日か金曜日頃、左腕に湿疹ができたんですね。それも広範囲に。これが痛くて、仕事が進みません。皮膚が悪いっていうのは大変。とほほ。ソファーで昼寝をしている時に何かに噛まれたのか、はたまたストレスか。謎。

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近頃話題の「ブラック・スワン」、積ん読になっていたのを、家事の合間にようやく読み始めました。

不確実性の高いリスクとどうつきあうか?というのが一つのテーマですが、本書にはその解説に留まらない面白さがあります。「追認」のおそろしさ、「講釈の誤り」、ベル・カーブの正しい使い方…私が研究対象としているのは、比較的「月並みの世界」の話ではありますが、どれも「ぎくっ」とする話。これは気をつけんといかんなぁーと思うことばかり。中でも「事象からモデルを組み立てるのはいいが、モデルを使って事象を解釈するのはいかん」というのは面白い指摘。

しかし、この本は読んでいると疲れます。実はまだ読み切っていないのですが、読み切った後も、、自分の中ですとんと落ちるまで、もう暫く時間がかかりそう。amazonの書評には「訳がいまいち」という指摘もあるようですが、私はそう思いません。著者のハネた雰囲気を、できるだけ日本語に反映している努力が垣間見えて、楽しく読んでいます。

2009/09/17

At Cal Day32: 一月住んで、英語は上達したか(2)

朝にOpencast MatterhornのディレクターをしているAdamとミーティング。プロジェクトの方向性と、私が日本で進めている仕事と紹介しながら、今後の可能性について話し合う。英語に自信は無いので、レジュメを作りました。今後も情報交換を続けることになりました。双方に意味のある形で、何かできればいいのですが。暫く試行錯誤です。

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英語の話の続き。残り2つ。

3)名詞より、動詞が問題
私の語彙力の問題かもしれませんが、動詞の意味が分からないことで、会話の意味を掴めないことが時々あります。それが大体ポジティブな方向性なのか、ネガティブなのかは話の流れで分かりますが、そこから会話をつなぐとき「的外れ」ではいけないので、そういう時は黙って話を聞くだけになってしまいます…。こういう時、大勢の話に入っていく場合の方が楽です。彼らがキャッチボールをしていくうちに、流れからさかのぼって意味が分かるからです。
文法も大事だし、単語もやはり大事。

4)アクセントを忘れずに、腹式呼吸で
私の場合、話し続けているうちにアクセントが弱くなり、フラットな発音になってしまいます。とにかくおなかから声を出し、口を(特に横方向に)大きく動かして話す。これができるだけ多くの人に通じる発音の術だと気づき始めました。
でも面白いことに、私が居候している部屋の人は、だんだん私の発音に慣れてきたみたいです。ふと他の部署の人と話すと、英語が通じなくてがっかりします。恐るべき、ネイティヴの適応力。

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今週もようやく週末。毎日早起きで活動時間が長いので、土日が待ち遠しいです。

At Cal Day31: 一月住んで、英語は上達したか(1)

今日は昼にETS全体で月1に開かれるミーティングに初めて参加。ラザニアやピザなど、お昼ご飯をみんなで食べながら情報交換や業務報告。私はそこで自己紹介をしました、もちろん英語で。2、3分の尺でしたが、途中で話すことを忘れ、作っておいたカンペを見ると運良く笑いがとれ、うまいこといきました(こちらで「笑いがとれる」というのは、日本での5倍くらい大事だという印象です、助かった…)。
午後はディレクターのMaraと研究方針についてディスカッション。第一線で活躍されている方とゆっくり話をできる機会が持てるというのは、本当にありがたいことです。とにかく、みなさん親切。甘えてばかりではなく、お返ししていかないと。

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早いもので、米国に来てから一月経ちました。残念ながら研究活動はようやく方針が立った段階で、まだ形になっていませんが「一月も住んだら英語、うまくなったでしょう?」の問いには、答えられる時が来ました。

ズバリ、全然上達しません(泣 もしかすると周りから見れば、「結構コミュニケーション取れてるじゃない」と見えるかもしれません。しかし私が思うに、いくつかの要因のため、その上達は妨げられる、または、上達していないように感じているのではないかと考えています。

1)話せるようになるごとに、話せなくなる
一見矛盾していますが、例えば私の職場で考えてみましょう。最初は皆さん「お客さん」として接してくれますが、こちらが少し英語が話せるようだと見なされると、1対1ではなく、複数の会話の中に混じる機会が増えます。難しいのは、既に進行している会話の中に入る、またはその中から呼びかけられる時です。聞き取り能力に限界があるため、いったい今、何の話をしているのだろう?と文脈を読み、情勢を察するところから始めないと行けません。
すなわち、話せるようになるごとに、よりレベルの高い環境へ参入していく機会が増えるのです。この「奥行き」「行き先」はキリの無いように感じられ、大いに不安を感じます(笑

2)日本とつながりがある限り、頭が「英語」に切り替わらない
例えば仕事のメール。例えば家族とのビデオチャット。例えばこのブログ。普段話すことの大半は、その場で湧きあがってきた言葉ではなく、その前から考えていた言葉です。何か思うことがあっても、それが日本語で「蓄積」されていたならば、それを即座に英語に変換することは、私の力ではまだまだ困難です。いわゆる「気持ちが上手に伝えられない」悩みというのは、要は普段から英語で物事を考えて、言葉にしていないからこそのものでしょう。

残念なことに、私の頭の中はまだずっと日本語です。「英語で夢を見るようになると、それなりらしい」という話を聞いたことがあります。5年前にアンカレッジに10日程仕事で滞在したときは、日本人がほとんどいませんでした。そういえばその滞在中、英語の夢を見ていました。

明日へ続く。

2009/09/15

At Cal Day30: 眠いけどがんばる、Twitterが読み切れない

今日は眠い。昨日のお疲れが残っている。なんとか起き出して朝からESL。毎回8時半から始まるのだから恐れ入る。こんなに早起きを続けているのは高校以来。その代わり毎晩12時を待たずに「おねむ」です。午後からETS。コーヒーとチョコレートで眠気を黙らせて文献購読。ようやく研究の方向性が見えてきた、か。夜は力つきて、早々に就寝。

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曇りの日の朝。「霧の都、サンフランシスコ」の名の通り、朝はこの通り。「朝9時までに霧が晴れると、その日は暑くなる」と地元では言われているそうです。

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Twitter、続けていますが、朝起きたらエントリーが100とかあると読み切れません。でもささっと目を通せばいいかと思い、慣れました。でも英語のエントリはそうはいかない。これは論文と一緒。
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At Cal Day29: 二重生活はやはり大変

月曜日。昨夜までの雨も上がり快晴。もともと空気のきれいな場所ですが、雨上がりでさらに透き通った印象。朝から大学、文献検索・購読。午後は夜に東大との間で行うミーティングの準備。晩ご飯は自炊は諦め、El Cerrito Plazaにある「PANDA EXPRESS」でお持ち帰り。

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PANDA EXPRESS。焼きそばと餃子が美味しい。いつもおまけでFortune Cookieがついてくるのも嬉しい。

夜9時から東大との間で研究ミーティング。終わったのは11時半。みなさまお疲れさまでした。

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こちらで暮らし始めて大変なことの一つが、東京との間の「二重生活」です。今月末に主催している研究の実証実験を控えており、準備まっただ中なことが効いている気がしますが、本学のコンテンツ開発の業務も並行して進めているので、いろいろ重なるとこちらの研究はストップします。

金曜日をオフィスアワーと決めていますが、取り急ぎ済ませなくてはならない業務もありますから、切り分けが難しいのが正直なところ。我ながら大変な道を選んでしまったと嘆くこともしばしばですが、自分で選んだ道、来させてもらっただけでも、ありがたいのですから。

2009/09/14

At Cal Day27,28: 休日、ものごとを見る「立ち位置」

ようやくの週末。土曜日は日用品の買い物と映画鑑賞。日曜日は掃除・洗濯・食材の買い出し。朝晩は週5程度自炊していて、必要そうなものをまとめて週1回買い出すことにしています。毎週1回は同じ(ような)ものを食べている気がしますが、続けていると慣れてくるものです。ブログの更新と一緒。でも来月嫁さんが来れば頻度は相当下がるでしょう。ちょっとしたきっかけで習慣は崩れてしまう。これもブログと一緒。恐ろしい…。

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近所のDVDレンタルショップに映画を借りにいきました。DVDを借りる時、そのお店では5日レンタルでいくら、という一つのプランしかありませんでした。例えば日本のTSUTAYAなら、一泊レンタルから一週間まで広く選べますが、それに比べて随分シンプルだなという印象。でも5泊でも100円台なので、まあいいかと思えてしまいます。
1サービスをとことんお客さんの要望に応じて追求してしまう日本タイプ。そこまでしなくてもこの位で十分じゃない、と見切れる米国タイプ、とも見えます。これが米国全土で一般的かは分かりませんが、ちょっと象徴的だなと感じたサービスでした。

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それにしても、これまでもこれからも、米国に住んで「へー、こっちではDVDレンタルはこうなんだね」のような、ある意味日常的な気づきのようなものから、「へー、大学のICTを使った教育支援はこうなっているのね」のような、私の研究に直接関わるような気づきまで、いろんなことを知るだろうと思います。しかしそれがいわゆる括弧つきの「一般的」なものなのか、その判断や見極めは相当困難です。たかが6ヶ月程度住むくらいで「米国は今こうなっているよ」みたいな一般的なお話をするのは、ちょっと無理があります。

そういう経験をいろんな形で、良くも悪くも拡げて解釈することで、いろんなことが言えるような気はしますが、果たしてそれは正しくものごとを見ているのでしょうか?

しかし一方で「全てを知る」こともまた困難でしょう。突出した複数の事例を比較するなり、事例とエピソードをつなげて語るなり、方法論はいろいろあるでしょうが、そういう立ち位置を定めることって、日常生活にせよ研究活動にせよ、なかなか困難です。

2009/09/12

At Cal Day26: webcastの配信はどう進められているか

今日は午前に、webcast.Berkeleyのコンテンツ確認・配信を担当しているRichard Bloom氏にインタビューをしました。以下がその概略。

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■webcastのコンテンツ管理
webcastは、LMSのbspace上に作られたアドミンツールで一括管理されている。
収録された映像は講義室でエンコードされ、自動的にETSのサーバにアップロードされる。
コンテンツの最終確認をしてツール上で許可を出すと、そのクリップは自動的に学内のInformation and Science Technology(IST)にアップロードされ、学内外からアクセスできるようになる。

■教員が、webcastを使う手順
1 教員がwebcastを使える教室にアサインする
2 自動的にwebcastを使いませんか、という招待メールが教員に届く
3 アプルーブすると、自動的に録画が予約され、毎授業ごとに録画される
4 それに前後して、Copyrightの許諾の書類がETSと部局間で交わされる

■収録コンテンツには三つの種類がある
1 ビデオ収録:スタッフが出向いて、ビデオと映像を収録する。バックアップはDVCAM
2 "Screencast":スクリーン+タブレットで書き込んだ軌跡+オーディオが配信される (試験的に運用中)
3 オーディオ収録:朝から夕方まで、自動的に録音され、自動的にETSにアップロードされる(これは1−3全てにあてはまり、それぞれのバックアップとして使える)

■webcast管理画面の機能
・プレビューファイルを確認できる
・問題があればそのファイルをダウンロードして、QuicktimeやSoundtrackで修正して、書き替えることができる
・確認が終わったコンテンツを自動的にアップロードすることができる
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UCBではwebcastよりはるか前、1995年からBerkeley Internet Broadcasting System (BIBS System) が運営されていました。そのノウハウが現在のwebcastに引き継がれ、そしてこれから開発されるOpencast Matterhornのリファレンスになります。ちなみにBIBSの成果は論文化されており、当時のシステム構成や利用データを見ることができました。

これでETSの中の、webcast部門についての調査はほぼ終了です。何せ規模が違う、ノウハウの量と質が違う、歴史が違う…と圧倒させられました。私の研究とは別に、webcastのノウハウやOpencast Matterhornを、日本でも役立たせることができるかもしれません。

明日からようやく週末。体調もまだ万全でないので、静養+家事をすることにします。

2009/09/11

At Cal Day25: webcastの収録を見学、「仕組み力」について

昨夜のお熱は無事下がり、今朝も朝からESL。昼にFulbright Associationの昼食会で、他のVisiting Scholarとお会いする。日本からこられている山田さん、堀江さんとお会いする。日本人の研究者と面会できて安心。

午後はwebcast.Berkeleyの講義収録を見学。東大でも東大TVや東大Podcasts、UT OCWで講義映像を配信していますが、東大でほぼ全て人手でしている作業を、UCBでは全てのフローが自動化されています。いくつかの教室に「講義収録パッケージ」がインストールされていて、その場で映像をエンコード、アップロードしています。最終確認の作業を専門のスタッフがすますと、UCBのサイトやiTunes U、YouTubeに自動的にアップロードされます(Youtubeのみ現時点で一部手動)。

webcast.berkeley | UC Berkeley Video and Podcasts for Courses & Events
http://webcast.berkeley.edu/

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機器の構成、マニュアル、学生スタッフの育成など参考になる部分が多々ありました。こちらで書く予定のレポートのデータになりそうです。
面白かったのは、講義中学生さんから質問があった時、その声を集音していないのですが、その代わり講師が質問内容を繰り返すようにしていたことです。今日見学した講義は500人以上入る大教室だったので、その方が効率が良いとの判断でしょう。明日は、webcast.Berkeleyのpublishingの管理をしているスタッフにインタビューする予定です。

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海部美知さんの”Tech Mom from Silicon Valley”に興味深い記事があったので、転載。

憂うべきは「カリフォルニアの教育」か「日本のアニメ産業」か - Tech Mom from Silicon Valley
http://d.hatena.ne.jp/michikaifu/20090902


上記の記事などを読むと、確かにきっと、日本で「個人の努力」レベルで頑張っている方々は優秀なのだろうが、相変わらず「長期的に産業として成り立たせる仕組み」「新しいアイディアを生み出す仕組み」「人材を供給する仕組み」「グランドデザイン」といったものは、アメリカのほうがなんだかしっかりしているような気がしてしまう。悪いけど、「竹槍・・・」という言葉が頭をかすめてしまう。


私の仕事領域においても、近いことが言えるような気がします(自分の仕事環境を振り返ってみても)。ある仕事を長い間個人の努力のみで保たせてしまうと、本人が大変苦労することは勿論ですが、業務知識が暗黙知になりやすく周りと共有しずらくなり、ひいてはその業務を「引き継ぐ」人材を育成しにくい、などの弊害も考えられます。

私見ですが、「仕組みをつくる力」(勝手に「仕組み力」と命名)をお持ちの方は日本にも沢山おられます。これまでもそのような方々に何度もお会いしました。それらが形にならなかったのは、多くの場合、その「見せ方」と、それを選ぶ側の「目利き」に不足があったように感じました。つまりこれは個人の能力の問題だけでなく、それを取り巻く組織のインテリジェンスと意思決定の問題でもある気がします。

2009/09/10

At Cal Day24: 客員研究員、とは

今朝、ようやく日本からの引っ越し荷物が届く。先週に届いていたのですが、家で受け取る時間を作れませんでした。おかげで服が激しくヘビーローテーションになっていましたが、ようやく抜け出せそうです。
午後はYWCAで英語のレッスン。日本の7アクトと同じような形態で、担当の先生とマンツーマンで話します。私の先生はかつて小学校で特別支援教育にも関わっていた方で、日米の教育事情やNCLB法(やはり評判は良くない)についてディスカッション。夕方にキャンパス近くのBerkeley Public Libraryに立ち寄りました。

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いわゆる公立の図書館で、地元の人が小説を読んだり、ネットを見たり思い思いに過ごしていました。写真を撮れませんでしたが「Teens」というコーナがあって、若者が楽しめそうな今時の雑誌やCDが並べてありました。その後、少し熱っぽかったので、早めに帰って静養。
こっちに来てから、健康のために朝晩はできるだけ自炊をしています。今のところ、朝は100%、晩は70%位です。

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最近つくづく思うのですが、客員研究員というのは不思議な立場です。要はお客さんとしていさせて頂いているのですが、先方から何かを求められることもない一方、こちらから動かないことには何も始まりません。観察はされているでしょうが、最初の興味はそのうち失われます。意識的に、私は何がしたいのか、何を求めているのか、常に自分を見せていかなければならないと感じています。

己のすべきことだけに集中するという環境は、とても新鮮です。孤独とも言えますが、引き換えに得られるものを考えれば、悪いことばかりではありません。

2009/09/09

At Cal Day23: グローバルな人材育成に、欠かせないもの

今日はBASでESL授業の初日。着くと成績順にクラス分けの名簿が貼り出されていましたが、一番上のクラスにアサインされていて、びっくり。ついていけるか、不安。
初日は文法の授業でしたが、思った以上に分かりやすく、勉強になりました。出国前に予習した内容を再整理できて、とても有意義でした。こんな授業だと毎日通いたいですが、それでは語学留学になってしまいます…全般的にとにかく時間が足りません。それが一番の悩みです。

午後からはオフィスで、大学の組織研究の海外論文を調査。私の印象だと、UCBは東大以上に電子化が進んでいて、私の興味範囲だと90%以上その場でダウンロードできるので、本当に助かります。これだけでも、来た甲斐があります。
夕方に帰宅。

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先日ご紹介した黒川先生が書かれたものを読んでいると、これからは「インターナショナル」ではく「グローバル」な人材を育てなくてはならない、そのために若者が早くから異文化に触れ、つながりを作る機会を作るとが大事だ、との指摘をされています。

恥ずかしながら、これまで"international"と"global"の違いをはっきりと意識することはありませんでした。

-international: existing, occurring, or carried on between two or more nations
-global: of or relating to the whole world; worldwide
 (Oxford Dictionaryより)


例えば私はフルブライト基金の援助を受けて米国に来ていますが、このグラントがこれまで狙ってきたのはその成り立ち上、globalというよりはinternationalな人材育成だったかもしれません。またその育成には、滞在期間も十分ではないように感じます。

こちらに来てまだ3週間ですが、この短い期間の間にも、強く感じていることがあります。それは、もしグローバルな人材育成に、若者が海外に出ることが必要条件であるならば、彼らを「海外へ送り出し」「海外で支え」「自国で受け入れる」システムが不可欠であろう、ということです。

いかなる人材育成においても、異なる業種・専門性を持った人々同士の人材交流に効果があることは、様々な研究や実例により示されています。私はこの「人材交流」が大変重要なキーワードだと考えていますが、ただ若者に「海外に出るべし」と背中を押すだけでなく、彼らを現地で支え、帰国後彼らにとっての「出口戦略」が描きやすい仕組みを作ることが、人材交流、ひいてはその育成をより後押ししうるのではと考えています。

日本が海外において、他のアジア諸国の中でプレセンスが下がっているとの見方がありますが、少なくともキャンパスで、私もその傾向を強く感じています。あくまで私見ですが、例えば中国や韓国、台湾などの国々は、既に上に述べたようなサイクルを持っていると感じます。これが彼らの強さであり、裏返せば日本の弱さではないでしょうか。

2009/09/07

At Cal Day21,22: Labor Day、お宅訪問、キャンパスのエネルギー削減

9月7日の月曜日、こちらはLabor Dayでお休み。日曜日は家事をし、月曜日にはYWCAのレッスンをしてくれているRobinson先生のお宅を訪問。その家(コンドミニアム)にはプールがあり、泳がせてもらいました。いい運動。

こちらに来て三週間経ちました。明日からBASでのESLも始まります。そろそろ腰を落ち着けて活動しなくては。

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一つ気になったニュース。大学キャンパスのエネルギー効率を高めるための5つの指針。

EDTECH: Focus On Higher Education - 5 Avenues to Green
http://www.edtechmag.com/higher/september-october-2009/5-avenues-to-green.html

大学の消費するエネルギーの1/3はテクノロジー利用によるものと言えるため、次の5つの方法で無駄なエネルギー消費を削減しよう、という記事です。
1)シンクライアントの導入
2)エネルギー効率のいい機器("Energy Star"認証付き)を導入
3)サーバの統合
4)印刷物を減らして電子化する
5)ビデオ会議の活用

どうやら日本でも25%(!)CO2削減という目標を狙うようですし、キャンパスのエネルギー効率を上げる数値目標が掲げられるようになるかもしれません。専門家によると、日本は比較的エネルギー効率を既に高めており、ここから消費量を減らすのは「乾いた雑巾をしぼるようなものだ」とも言われています。大学はどうでしょうか。雑巾の水気よりも、絞る力(予算投入)に困る気もしますが…。

2009/09/06

At Cal Day20: 休日、モノに魂は宿るかとの問い

土曜日、米国は今日から3連休(月曜日がLabor Day)。やることはいろいろありますが、今日は完全にOFF。部屋を片付け、映画を見て過ごしました。

そのうち一つが「From the Earth to the Moon」。俳優でかつ宇宙オタクでもあるTom Hanksが統括し製作された、HBOのドキュメンタリーシリーズです。実は私も宇宙計画が大好きで、機会あるごとにKenedy Space Centerで書籍やDVDを買い漁っています。全部で12話のストーリが入っていますが、どれも本当にあったエピソードが組み入れてあり、彼のマニアぶりには恐れ入ります。



英語字幕のついた本国版。日本語版と合わせて私は持っています(笑 
出国前、英語の勉強に疲れたときは、これを見て気分転換をしました。

収録されているうちの一話に、月着陸船(Lunar Module:通称LM、時にLunar Excursion Module:LEMとも呼ばれる)を開発した米Grumman社(現Northrop Grumman)のエピソードがあります。

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Kennedy Space Centerに展示されているLEM。(ほぼ)本物。

LMの開発はその複雑さのため、アポロ計画の一部を変更したほどに大変難航しました。その開発責任者、Tom Kellyが、完成したLMをNASAに引き渡す時の言葉がとても印象的です。
長文ですが下に引用します。研究のため、仕事のため、さまざまな「ものづくり」に関わる方々には、心に響く一節なのではないでしょうか。
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To some people, that might sound like I'm stretching the point.
A LEM is not a child, it's a machine, and a machine doesn't have a soul.
We may yell at our toasters and give a name our cars, but in the end even a LEM is just a collection of wires.. and circuits and nuts and bolts.
I don't know. I think each LEM does have a soul. It's a soul of all the people who built her, designed her, first dreamed of her...
--
( By Tom Kelly, The Project Engineer, Engineering Manager and Deputy Program Manager for Grumman Aircraft's Apollo Lunar Module )

2009/09/05

At Cal Day19: BAS、日本から来客

涼しい朝。午前中はBerkeley Adult Schoolでオリエンテーションを受ける。
今年からいくつかルールが変わったようです。

・週5回の授業は最低週3、週4回の授業は最低週2は出ること
・1週間以上休むときは、かならず先生かオフィスに連絡をすること
・そうしない場合、リストから名前が外れる

以前は月一参加でもよかったそうですが、政府から「まじめな生徒がきちんと通っている学校」と見られるような体制にしないと、予算が今以上にカットされる可能性があるからだそうです。こんなところにも、財政状況の悪化が影響しています。

午後には東京から望月さんと林さん、ワシントン大学に留学中の大浦さんがキャンパスに。私のいるオフィスや施設を案内しました。久しぶりに晩ご飯を大勢で食べて、夜9時過ぎに帰宅。みなさん、わざわざUCBまで来て頂いて、ありがとうございました。

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今日は面白い話を聞きました。大浦(2009)によると、異文化への適合には3つの段階があり、まず認知(Cognitive)、次に感情(Emotional)、そして身体(Physical)のステップを踏んで適合が進むそうです。大浦先生はこの「CEPモデル」に基づいて、シアトルで文化適合を進めておられるとのこと。Learning Science研究の傍ら、いろいろとお元気なようで何よりです。

2009/09/03

At Cal Day18: 慌ただしく、暑い一日

昨日から気温が高い。アパートの大家さんが「9月にときどき、とても気温の高い日があるから」と言っていましたが、まさにその時期のようです。昼間は30度超え、しかしオフィスに空調はありません。湿度が低いのでまだましですが、やはり暑いものは暑い。
今朝オフィスに来てみると、学内LMSのbSpaceにトラブルが発生して、スタッフが早朝から対応に追われていました。それが一段落したと思ったら、オフィスの目の前で廊下を歩いていた老婦人が突然倒れて、救急車を呼ぶ騒ぎに。ご婦人は英語が不得意のようで困りましたが(私が言うのもなんですが…)、一緒にいた学生さんがスペイン語を話せる人で、通訳をしてもらい、事なきを得ました。

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英語について。こちらにきて気づいたことは、実は対して英語が話せなくとも、そう生活には困らないということです。先のご婦人のようにスペイン語圏の人や、中国語圏の人は出身地が同じグループで大きなコミュニティを作っています。私のアパートの近くにあるEastern Mallもそうですが、そういう人たちでショッピングセンターを作ってしまうほどの勢いで、このパワーには驚きます。しかしどうも、そういう地域や人の輪の中で生活していると、母国語で足りてしまうようです。そういう方々のお子さんは米国で生まれたので親より英語は堪能になるため、親は子どもに助けられて生活をしているようです。私の階下に住んでいる中国人のご夫婦は、まさにそのパターンです。

環境の変化に身を任せるだけでなく、こちらから積極的に聞き、話し、働きかけていかないと語学は上達しないのだなと改めて感じます。そう思い、今日もオフィスのスタッフのchatを聞き、話に入ろうとするのですが…うん、やっぱりむずい。前途多難です。

At Cal Day18: BASとYWCAで基礎作り、Twitter

昨日より暖かい朝。昨日はどうやら少しお熱があったようですが、ほぼ治りました。
朝からBASでクラス分けのテスト。リーディングとリスニングはそこそこでしたが、グラマーがいまいち。日本でZ会の大学受験参考書で勉強していきましたが、やはり過去完了や仮定法、倒置文を理解してないことがよく分かりました。きちんとした英語を話すことは、こちらでの研究活動での基礎になります。BASでは週5回授業がありますが、毎日通っていると語学留学状態になってしまうので、週2、3位に抑えておきましょう。

午後からは、大学のオフィス近くにあるYWCAへ。ここではEnglish in Actionというプログラムがあり、週1回マンツーマンで英語のレッスンを受けられます。今日はレジストレーション、これから毎週、水曜日お昼に通います。

大分リズムができました。こちらに来てからすっかり朝型です。日付が変わる前には寝てます。夜は疲れ果てて、日本とskypeでつなぐ仕事がある以外は休んでいることがほとんど。とはいっても日の入りが8時くらいなので、短い夜ですが。

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相変わらずTwitterを続けています。知っている人(対面でとか、会ったことはなくてもブログでとか)のつぶやきは、その人となり、ブログのエントリなどを補完する情報として楽しめますが、知らない人のつぶやきは、馴染んだ分野の話でないとほぼ理解不能です。Twitter上で面白いと思わせるには、かなり詩心がないと難しいかも。
あとTwitterやRSSリーダに、いわゆる「アンテナのよい人」、つまり情報に関して感度の高い人を登録しておくだけでなく、自分なりに一次情報を探して確認する手間も大事ですね。日々本を読んで、ググって学ばねばと思う今日この頃です。

2009/09/02

At Cal Day17: Visiting Scholar説明会、Utah State Univ. OCWが終了

今日は午前中に学内のInternational House(留学生センター)で、Visiting Scholar向けの説明会に参加。Postdoc Students向けの説明も同時に行われたのですが、VS向けの説明はあまりありませんでした。ですが大学の歴史や図書館、博物館の紹介があって、なかなか有意義でした。

20090902.jpg
歴史のある建物らしいInternational House。併設のカフェは有機食材を使っているそうです。さすがBay Area。

午後はひたすら文献購読。英語だと半端なく時間がかかります。軽く5倍はいっているのではないか? 困る。時間が足りない。

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夜に驚くべきニュースが入ってきました。米国でも第2位のアクセスを誇るユタ州立大のOpenCourseWare、終了のおしらせ。

The Wired Campus - Utah State U.'s OpenCourseWare Closes Because of Budget Woes - The Chronicle of Higher Education
http://chronicle.com/blogPost/Utah-State-Us-OpenCourseWare/7913/?sid=wc&utm_source=wc&utm_medium=en
��chronicle.com を購読していないと読めないかも、すみません)

Utah State OpenCourseWare — Free Online Course Materials — USU OpenCourseWare
http://ocw.usu.edu/

Chickens Don't Have Armpits: End of an Era(既に職を離れたUSU OCWディレクターのブログ)
http://chickenarmpits.blogspot.com/2009/06/end-of-era.html

原因は予算不足で、年間12万ドルの経費を確保できなかったとのこと。日本に限らず、米国の大学は財政が大変なことになっています。UCBでも予算減のため、今セメスターから授業の7%をカットしています。

「オープン・エデュケーション」をいかに持続的に支えるか。そのために必要な教材の「かたち」は?必要な人材は、その育成は?Fund Raisingは? それらの問いに早急に答えるべき情況になりました。文中の"Heartbreaking"は私も共有しますが、これまでのOCWのあり方の自省をしつつ、新しいその社会的意義に基づいて考え始める必要があります。